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【本の紹介】資金繰りの不安がなくなる最高の方法
公認会計士・税理士の山口真導です。
久しぶりに本の紹介をしたいと思います。ご紹介するのは、税理士の近藤学さんが書かれた「資金繰りの不安がなくなる最高の方法」です。
わたしは、最近すっかり節税の人になっていますが、わたしの処女作は「資金繰りのキホン」ですから、わたしも資金繰りに関しては言いたいことが山ほどあります。また、近藤さんより、節税の部分について辛口コメントを、などと言われているので、その点についても書かせて頂きます。
1.資金繰りの見える化を本気で実現する良心的な本です
本書によると、社長が資金繰りの不安から解放されるために必要なことは、次の3つです
- 自社のおかれた現実と向き合うこと
- 銀行借入とうまく付き合うこと
- ビジネスモデルを改革すること
このうち、1と2について本書で学ぶことが出来ます。
このうち1を実現するために重要なのが、資金繰りの見える化です。資金繰りの不安の理由は、半分は「見えない不安」です。本書では、そこを見える化するために「日繰り表」の作成を薦めています。ただ薦めるだけでなく、エクセルで作られた日繰り表ソフトが付属されていて、真剣に資金繰りの問題を解決しようとされているところが大きなポイントです。
ソフトが付いて、使い方の解説まであって、税抜き1,550円ですから、こんなに良心的な資金繰りの本は中々ありません。
2.日繰り表がもたらす効果
日繰り表というと何か難しそうに感じられるかもしれませんが、要はお小遣い帳です。その入金と支払の実績を付けることで会社のおカネの流れを把握することが出来ます。
基本的には、毎月同じ支払+臨時の支払ですので、日繰り表の作成初月は沢山の入力が必要になりますが、2ヶ月目以降はそれほど沢山の入力が必要にはならないように付属のソフトは配慮されています。
資金繰りの問題は、毎月同じ支払と臨時の支払では種類が違います。毎月同じ支払は、いわゆる回転差といわれる、ビジネスモデル上解消しえない運転資金の不足の問題があります。しかし、この差については正しく銀行対応すれば借入で解消することが可能です。一方、臨時の支払については厄介です。予測外の支払がいくつも出てきてしまって、運転資金を使ってしまうと、いくら銀行借入で賄おうとしても賄いきれない場合があります。
こうした状況を避けるために、本書では、預金口座を使途別に分ける方法を紹介しています。近藤さんがこの本の前に翻訳者として出版された「PROFIT FIRST お金を増やす技術」で詳しく紹介されたやり方を簡潔に紹介されています。
作成する預金口座は少なくとも次の4つです。
- 売上入金口座
- 支払口座
- 納税口座
- 利益を残す口座(おたのしみ口座)
最後の4の口座には、残った利益を振り込むのではなく、最初から確保した利益を振り込むところがポイントです。つまり、売上口座の残高を、毎月、それぞれの口座に振り替えてしまって、その範囲内でやりくりしましょう、ということです。そうすると無い袖は振れませんから、臨時の支払を抑えることが出来ます。
本書は基本的に資金繰りに悩んでいる社長向けの本ですので、この考え方を採り入れるには意味があると思います。一方で成長途上にあるイケイケどんどんの社長は本書の対象ではない点には注意が必要です。なぜなら、利益を高く設定しすぎると、成長の機会を逸する場合もあるからです。広告費とLTV(ライフタイムバリュー、生涯獲得利益)の関係なども考慮にいれながら、適切に対応して下さい。
3.資金繰りと節税に関して
本書は会社の資金繰りをテーマにした本ですので、「会社のおカネ」の残高を増やすことを目標にしています。したがって、節税に対しては否定的な見解です。「オーナー社長のおカネ」の話をしているわけではありませんので、その点、注意して読んで頂ければと思います。
そもそも目標にしているおカネの種類が違うので、辛口コメントのしようがありません。近藤さん、ご期待に添えず、申し訳ございません。
オーナー社長の資金繰りということを考えた場合、正しく行えば各種の節税対策が意味あるものになります。そもそも会社の資金繰りが苦しい場合、自分のおカネの話より先に、会社の資金繰りの改善が必須ですので、それぞれ自分のおかれた状況に応じて対応する必要があります。
ビジネス書を読むときには、こうした背景や前提の理解が不可欠ですので、お気をつけ頂きたいと思います。
4.縮小オプション、撤退オプションの発動がキモ
本書の内容で一番大事と思ったのが、最終版の「中小企業の経営戦略と借入金」の稿です。
「中小企業の倒産の多くは、縮小オプション、撤退オプションを取るべき時に取れなかったことによるものです」という一文が、超重要なポイントです。
コロナ禍の影響で資金繰りが苦しいという会社もあると思いますが、その解決策は、いま流行の「事業再構築補助金」ではないということです。縮小オプションが先にありきで事業再構築補助金に走るのはアリですが、それナシで事業再構築補助金を獲得すると、この補助金でトドメを刺される会社もあると思います。
資金繰りが苦しい原因が分かったら、最初にやるのは「止血」です。止血のないところに輸血しても意味がありません。わたしがいまも会社を倒産させずに維持出来ているのは、資金繰りが苦しい時に大胆に支出を縮小させたことが理由だと実感してますし、それがセオリーです。この点、絶対に間違えられないポイントだと思います。
5.資金繰り難が解消したら節税しましょう
いまいま資金繰りが苦しい会社にとっては、本書は大いに役に立つと思います。まずは付録の「日繰り表」を作成して、資金繰りを見える化し、止血を完了させて下さい。そのうえで、会社の業績が改善し資金繰り難を乗り越えたら、節税対策を検討しましょう。
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