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続:クレジットカードのポイントを使うと課税される説について
こんにちは、公認会計士・税理士の山口真導です。
前回、法人クレジットカードのポイントを社長が使った場合の課税関係についてお伝えしました。記事を公開した後、法人クレジットカードの「法人」の部分に焦点を当て過ぎだったかもしれないと思い立って、今回は前回の続編として、法人、個人のいずれのクレジットカードかに限らず、あらゆるポイント利用の課税関係について検討してみたいと思います。
1.所得が発生したら「必ず」課税されるのか?
税金に関する情報を読み解く際に、「課税される」という言葉をどう解釈するのかというのは極めて重要です。
そのままストレートに読めば、「課税される」という言葉の解釈は100%税金を払う必要あり、となります。しかし、税金に関する情報を、実際に読みとく際にはゼロイチで考えるのではなく幅をもって考えなければなりません。
現実には、課税されるかどうか?のゼロイチで考えると、課税されてもおかしくないのに、課税されていないことは山ほどあります。例えば、お歳暮、お中元、お年玉、誕生日プレゼントもですね。もし税務署に相談したら「申告して納税して下さい」ということになります。
実際、ある知人からお歳暮について賞与という指摘を受けて、修正申告をした法人があるという話を聞いたことがあります。家族経営の会社に届いたお歳暮を家族でおいしく食べたというのが課税原因だったそうです。金額が申告が必要になる額に達していないというツッコミはあるかもしれませんが、150万円のオーディオアンプを取引先にプレゼントしている事例なんかも見たことがありますが、この場合、受け取った側は、ルール上は間違いなく一時所得で申告をして納税する必要があります。
クレジットカードのポイント利用も同じことです。
所得が発生したら課税されるというのは大原則のルールなのですが、現実社会は、そうなっていないということがあるということです。
2.ふるさと納税の返礼品の一時所得課税
一方で、実際に課税されている同種の事例というのもあります。それが「ふるさと納税の返礼品に対する一時所得課税」です。
3年くらい前から、ふるさと納税を160万円以上している納税者に対して、返礼品分の雑所得の申告がない場合に、税務署から電話による税務調査が行われるようになっています。ふるさと納税で受け取る返礼品が、一時所得として課税されています(返戻率の上限30%、一時所得控除50万円から基準を設定しているようです)。
ですから、クレジットカードのポイントが課税されないと断言するのは言い過ぎです。しかし、ふるさと納税の返礼品の課税が、申告書上のふるさと納税額から計算出来ることに比べると、クレジットカードのポイント課税は、ポイントの利用履歴を解析する必要があり、かなりハードルが高いことです。これらを同列に扱うのは適当ではないでしょう(見つからなければ良いということが言いたいわけではありません)。
3.申告納税制度の「せい」なのか「おかげ」なのか?
こうした課税されるのか?されないのか??問題が発生する原因は、全部、申告納税制度のせいです(納税してなくて良いのは「申告納税制度のおかげ」でもあります)。
顧問税理士が確定申告書を作る時に、ポイント利用分の資料を社長に提出させて一時所得で申告し納税することは可能です。税務署が申告間違いなので返金しましょう、と言ってくる可能性はゼロです。
一方、納税者が申告しなかった所得は、税務調査で発見されれば更正されます。この更正に不服申立をすると、国税不服審判所で審査されます。その審査内容のうちの一部が公開裁決として公表され、実務に影響を及ぼします。
もし、クレジットカードのポイントの問題が国税不服審判所で審査されれば公開裁決として公表されると思います。それが出た時に実務が大きく動き出すことでしょう。いまはそうした裁決のない状況です。この状況をどう解釈するのか?は納税者や税理士次第ということです。
4.ポイント利用に課税した場合の社会的インパクト
ポイントに課税すれば税収は上がるでしょう。しかし、ここにメスを入れるのは社会的インパクトが大きすぎて、なかなか難しいのではないか?と個人的には思っています。
というのも、キャッシュレス決済は政府も推進するDXの要ともいえる要素だからです。そのキャッシュレス決済を拡大するために、関連する各社がポイント競争をしてシェア争いをしているという現実があります。ポイントに課税するということは、キャッシュレス決済の推進にブレーキをかけることになります。
国税がクレジットカード納税出来る様になったのも、こうした流れの一環です。クレジットカード納税ではポイントが貯まらないようにすることも不可能ではないにも関わらず、そこに対して何も対策をしていないのは、他でもない国税です。そうした状況も踏まえて判断するべきでしょう。
社長の場合、使う金額が大きいので貯まるポイントも大きいということはありますが、富裕層だけを標的とした課税というのは憲法上不可能ですので、当面、クレジットカードのポイント利用で課税という話は出てこないのではないか?と個人的には考えています。
もし、そうした取扱の変更が発生する場合には、皆さんにいち早くメルマガでお伝えしようと思っています。
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5.一時所得は2分の1課税です
最後に、悲しいお知らせがあります。一時所得課税は2分の1課税です。
仮にクレカ納税で150万円のハワイ往復ペアチケット(ビジネスクラス)を手に入れたとします(1年間にこれ1回切りの前提です)。その場合、この分にかかる税金は27.5万円です。
(150万円ー50万円)×1/2×税率55%(所得税45%+住民税10%)=27.5万円
納税手数料は10万円くらい発生(但し会社負担)しますが、納税手数料と税金負担を足しても40万円弱の負担です。課税か課税じゃないかの議論をして、とにかくポイント所得を納税させようとしている税理士先生方には申し訳ありませんが、40万円払ったら150万円貰えるということは、申告しても得なんだから、リスクリスクと大騒ぎして「お疲れ様でございます」と言わざるを得ません。
顧問先を護るための騒ぎなのか?、顧問先が得をするのがイヤなのか?聞いてみたいところです。
6.リアルなことは書き辛い
超リアルな話を2回に渡って書きました。建前ゼロ、本音ノミの話は如何でしたでしょうか?
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次回は2月9日(水)16時〜です。
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