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法人クレジットカードのポイントを使うと課税される説について
こんにちは、公認会計士・税理士の山口真導です。
メルマガ読者の方は、皆さんご存じのとおり、わたしは法人クレジットカードで納税することを推奨しています。
そうすると心配されるのは、溜まったポイントを社長が使って大丈夫?という話です。わたしは税理士として、現状課税されることはない(課税され「て」ない)と判断するからこそ推奨しています。ですから、わたしのいうことが信用出来ず心配なら止めておけば良いというスタンスです。
ところが、法人クレジットカードの売り込みと誤解してなのか?うちの顧問税理士はダメだと言ってるぞ!!と反論されることもよくあります。私のスタンスはこのケースでも「顧問税理士がNOと言っているならNO」です。その顧問税理士を選んだのは当の社長なのですからNOで良いじゃないですか?その中には何でもNO!と言えば良いというスタンスの税理士も紛れ込んでいるとは思いますが、それを見抜けない社長が悪いんです。
しかし、社長や税理士がそうした反論をしてくるのは、インターネット検索すると「課税される」という情報しか入ってこないことも原因だと思います。社長や税理士が自分の頭で考えたら、ここまで偏った情報にはならないはずです。インターネットに頼らずにカード会社に一本電話入れれば解決する話だからです。この状況は酷すぎるでしょう。
そこで、この状況に一石を投じるべく、インターネット上にわたしの見解をまとめようというのが今回の投稿の目的です。Googleさんの評価は如何に?!
1.ポイント利用が課税されるという3つの説
インターネットを検索してみて、法人クレジットカードのポイント利用が課税される理由をまとめると次の3つに大別されるように思います。
- ポイントを社長が使うと会社からの贈与は一時所得にする
- ポイントを社長が使うと給与所得(=役員賞与)になる
- ポイントを社長が使うと不当利得になるので一時所得又は雑所得になる
このそれぞれの説について共通する腑に落ちない点があります。
1-1.贈与で一時所得説
贈与が成立するためには、会社がポイントを保有していることが必要です。贈与するものをもっていないのに、贈与が成立するわけがないからです。果たして会社は法人カードで決済したポイントの保有者なのでしょうか?
1-2.役員賞与で給与所得説
給与所得とは、使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得をいいます。労働役務の対価と捉えてよいでしょう。さきほどの贈与の件と同様に、会社が社長に渡すポイントをそもそも保有しているのかどうか?という問題に加えて、社長のポイント使用が労働役務の対価かどうかという問題があります。少なくとも労働役務の対価と立証出来るとしたらその人はエスパーでしょう。
1-3.不当利得として一時所得又は雑所得説
不当利得とは、法律上の原因がないのに他人の財産や労務によって利益を受け、そのために他人に損失を与えることです。会社保有のポイントを勝手に利用した(ネットでは横領という風に表現しているものが多かったです)ので不当利得と考えるようです。一時所得か雑所得かはさておき、不当利得にも課税されるというのは判例上通説なので、もし不当利得に該当するなら課税されてしまいます。しかし、これもポイントを会社が保有していなければ成立しない考え方です。
2.ポイントは会社のものなのか?
どの説にも共通する前提条件は、ポイントは会社のものということです。しかし、会社の経費や税金を決済したことによってポイントは蓄積するのですが、本当に会社のものなのでしょうか?
そこで、わたしは調べました。カード会社に直接問い合わせてみたのです(超単純(笑))。
そこで解ったことは、ポイントは社長のものということです(少なくともわたしがお客様にオススメしているカードについては。でもほとんどのカードが同じようです)。
会社の経費や税金を支払って貯まったポイントなのに、なぜ、社長のものなのか?と疑問に思う方も多いでしょう。その理由は法人クレカの名義にあります。法人クレカの名義人は会社ではありません。会社名をカードに入れられる法人カードは幾つかありますが、名義は個人名になっています。その証拠に、サインは個人名をサインするはずです。つまり、法人カードと個人カードの違いは、決済口座が法人名義の口座か個人名義の口座かであって、それ以外は法人カードも「ほぼ」個人カードなのです。
画して、法人カードで会社の経費や税金を決済したことで貯まったポイントは、名義人である社長にチャージされていくのです。したがって、会社は贈与や役員賞与として渡そうにもポイントを持っていませんから不可能ですし、社長が自分の保有するポイントを利用しているだけなので不当利得は成立しません。つまり、ポイント利用が課税されるという3説は、その前提条件が成り立っていないのです。
3.課税論者の税務調査対応が危ない
課税論者からは、ポイントが社長のものであっても課税は出来るという意見もあるでしょう。私もそう思います。ですが、そこまで仰るならお伺いしたいと思います。
「お客様が損する持論にそこまで固執するのは何故ですか?」と。
確かに、社長がポイントを利用することで得をした金額を把握することは容易に出来ますので、課税することは不可能ではないばかりか比較的簡単です。実際に指摘されたわけではありませんが、調査官がポイント利用は役員賞与と指摘することは可能だと思います(第2説)。この指摘が通れば、法人税は損金不算入、所得税の課税漏れ、源泉徴収漏れ、のトリプルパンチの達成です。
信じられないかもしれませんが、調査官の指摘の根拠は税法とは関係ありません。ところが、課税論者の顧問税理士の場合、「そうですね。修正申告します。」という話になる可能性があります。その場合、社長は払う必要もない税金を払わせられることになります。加えて、顧問税理士から修正申告の報酬も請求されることになるでしょう。
修正申告は「自ら否を認めて申告書を修正している」ので、どこにも記録が残りません。ただ敗北があるのみです。
「顧問税理士がNOと言っているならNO」と冒頭お伝えしたのは、通常、税務調査の立会は顧問税理士が行うからです。顧問税理士がNOの場合、結局、社長は税金を払うことになる可能性が高いので、顧問税理士の意見に背いて、法人クレジットカードのポイントを利用するのを止めておくように勧めているのです。
(修正申告の場合は、税務署内で税法的に問題がない指摘か検討されることもありません。だから調査官の指摘の根拠と税法とは関係がないのです。こうした調査官の発言に納税者が騙されないために税理士が税務調査に立ち会うというのが、顧問税理士の存在価値だと思います。調査官に乗っかって修正申告で稼いでいる場合ではありません。)
4.カードのポイントで課税されたケースはあるのか?
税理士向けにTAINZという有料の判例検索システムがあります。今回の記事執筆にあたって判例等にあたってみましたが、クレカのポイント利用を争った裁決や判例は見つけられませんでした。
クレジットカードのポイントを利用されている社長は大量にいると思いますし、もし、そうした課税が実際に行われているとしたら、どこかしこで議論になると思いますが、そうしたものを聞いたことがありません。もし、ご存じでしたら教えて欲しいです。
しかし、さきほど税務調査の項でも書いたとおり、税務署側から更正されたことはなくても、修正申告しているケースがないとはいいきれません。確実に言えることは、少なくとも、わたしの回りに課税されたケースは無いですし、耳にも入ってこないということです。
5.良いか悪いかは別としたリアルな税務リスクの話
理屈で話しても納得出来ない人は他の事例と比べると分かり易いと思います。
例えば、中小企業のオーナー社長が会社が買ったクルマで家族旅行をするケースと、クレジットカードで溜まったマイルで家族旅行したケースでは、どちらが税務調査で問題になりやすいでしょうか?
少なくとも、わたしの感覚では、前者のクルマのケースの方が圧倒的に問題になりやすいと思います。法人所有の車両の個人使用の裁決例や判例はTAINZにも沢山収録されています。しかし、比較をすれば問題になり易いということと、実際に問題になるということは、また別の話です。前者のクルマのケースも税務調査の現場で実際に問題になることも少ないですし、仮に議論の俎上に登ったとして修正申告に至ることは、ほとんどないのではないか?と思います。
だとすると、クレジットカードのポイント利用について、殊更に課税リスクが高いと考えるのは妥当性を欠くと思います。この事例でいえば、そもそも問題になる可能性が高くない法人車両の私的利用より、更に低いわけですから。
6.税法の改正はあり得ます
日本国は憲法30条に「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と定めて、租税法律主義を採用している国です。したがって、税法が改正されれば、今回、お伝えした話の結論は180度変わります。
例えば、昨年まで取り組んできたドローンや足場リースは、令和4年度の税制改正で節税効果が無くなる予定です。この改正から、ドローンや足場は法律改正しなければ取り締まれないものだったと解釈することも出来ます。ドローンも足場も多くの税理士から問題視されていました。改正されて、彼らは溜飲を下げているかもしれませんが、「彼らの顧客」はどう思っているのかな?と余計なことを考えてしまいます。
クレジットカードのポイント利用も、いずれ税制改正で出来なくなるかもしれません。出来るうちに出来ることをやるのか、リスクを考えてやらないのかは社長の自由です。色々心配している間に、先に始めた社長達がどんどんポイントを溜めていることは事実ですが、これを気にするかどうかも、また社長の自由です。自分のおカネをどうするかの判断は社長以外には出来ないからです。
そこを税理士に判断して欲しいという甘い社長とは契約しないようにしています。
7.NO!というのは社長の仕事
税理士の仕事で重要なことは、その時点のルールの中で出来ることを探してきたうえで、そのリスクを把握し、それを正しくお客様にお伝えして、それぞれのお客様のポリシーに沿った判断をして頂くことだと思います。
つまり、NO!と言うのは税理士の仕事ではなく、お客様である社長の仕事ということです。
わたしの提案に乗るも良し、乗らぬも良しです。一つだけお願いがあるとしたら、ちゃんと話を聞いて欲しいということです。わたしは何かの商品を売りたくて話をしているのではありません。税理士としてお客様が叶えたい願望を実現する方法を提案しているだけです。気に入らなかったらやらなくて良いですからね。そんなことでわたしは不機嫌になったり絶対にしませんから。
そういう意味で、社長と税理士の相性はおカネに関する考え方が合うかどうかが一番大事です。わたしの社長のおカネに関する考え方を知りたくなったらセミナーに参加して下さい。次回は2月9日(水)です。3月以降のお申し込みも可能です。是非、参加下さい。
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