インボイス制度で炙り出された消費税が本質的に持つ嘘と闇

こんにちは、公認会計士・税理士の山口真導です。

税法のルールに関しては、なるべく不満を持たないようにしています。国民が選挙で選んだ国会議員が、国会で審議して多数決で決めた法律だからです。しかし、現実には、国会での審議の内容は公開されているとはいえ、そんなものをつぶさにウオッチする時間などなく、結局は、作られたルールに則って、対応するのが私の仕事です。その結果、実際にお客様の相談に応じたり、申告書を作ったりするなかで、「この税金ヤバいな」と気付くことがあります。

初めて申告書を作った時に「ヤバイ」と思った消費税が、インボイス制度で、もう本当にヤバ過ぎるという確信を持つに至ったので、今回は、その「ヤバみ」についてお伝えしようと思います。

1.消費税は間接税という建前

タックスアンサーに「消費税のしくみ」というページがあります。そこには、次のように書かれています(下線はわたしが入れました)。

消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。

消費者が負担して事業者が納付するということで、消費税は間接税という風にいわれています。しかし、これは本当なのか?と疑問に思うことが沢山あります。本当は、事業者が負担する税金なのではないか?という疑問です。

2.消費税は本質的に直接税

消費税が本当は直接税ではないか?ということを理解するには、消費税の申告・納税の仕組みを理解する必要があります。多くの国民が知らない消費税の申告・納税の仕組みのうち、直接税と思われる痕跡について紹介したいと思います。

2-1.控除対象外消費税の存在

わたしが最初に事業者が負担する税金ではないか?という疑問を持ったきっかけは、「控除対象外消費税」の存在です。

本来、消費者が負担して事業者が納付するならば、事業者は、消費者から預かった消費税から、事業者自身が消費者として払った消費税を控除した金額を納税することになります。しかし、消費税法上、消費者として支払った消費税の全額が控除出来るというルールにはなっていません。つまり、消費税を払っても控除出来ないことがあるのです。

この控除出来なかった消費税のことを「控除対象外消費税」といいます。控除対象外消費税が発生する理由は、消費税の申告のしくみにあります。消費税の納税額を計算する際には、「課税売上割合」によって控除出来る消費税の金額が変動するルールになっているからです。

例えば、居住用のアパートの大家さんの場合、賃料収入は非課税売上ですので、賃料収入以外に収入がない場合、課税売上割合はゼロ%になります。課税売上割合がゼロ%の場合、控除出来る消費税の金額はゼロ円になります。仮に、新しい建物を取得して、多額の消費税を納税しても、控除出来る消費税はゼロなのです。つまり、消費税の負担者はこの大家ということです。この大家から消費税を受け取った事業者が、消費税を納税している場合、国は消費税を「二重取り」出来る仕組みです。

居住用アパートの大家だけでなく、保険診療をする病院、医師や、保険や証券など金融関係の会社は売上高の大半が非課税売上となり、最終消費者でもないのに、消費税を負担させられていて、その分、国は二重に消費税を受け取っているのです。

2-2.インボイス制度

消費税は直接税の疑念が確信に変わったのは、インボイス制度の内容を知った、その時です。

インボイス制度の導入によって、適格請求書発行事業者登録をしていない事業者(以降、非インボイス事業者)は、消費税の請求が出来なくなりました。逆説的にいえば、非インボイス事業者を使う側の事業者は、彼らに対する支払額については、消費税を認識することが出来なくなります。つまり、非インボイス事業者を使う場合、いままで非インボイス事業者の支払で認識していた消費税の分だけ、使う側の事業者が納税する消費税が増えるのです。

これは、云い方を変えると、事業者による、非インボイス事業者が負担する消費税の肩代わりです。非インボイス事業者に仕事を依頼すると、依頼した側が消費税を肩代わりして納税せよ!ということです。

これは、明らかに、事業者に対する課税です。

インボイス制度の導入によって、ついに誰にでも分かる形で、消費税は間接税ではなく直接税であるという本来の姿を現したのです。

2-3.消費税は「対価の一部」という判例

インボイス制度から、消費税は直接税という認識をもったところで、ネットを検索してみたところ、なんと、消費税導入直後(平成元年)に、消費税の違法性を問うた裁判があり、その際の裁判所の判断で特筆すべき記述があることがわかりました(下線はわたしが入れました)(コチラのサイトで知りました)。

事業者が取引の相手方から収受する消費税相当額は、あくまでも当該取引において提供する物品や役務の対価の一部である。この理は、免税事業者や簡易課税制度の適用を受ける事業者についても同様であり、結果的にこれらの事業者が取引の相手方から収受した消費税相当額の一部が手元に残ることとなつても、それは取引の対価の一部であるとの性格が変わるわけではなく、したがつて、税の徴収の一過程において税額の一部を横取りすることにはならない
 

「消費税相当額は消費税ではなく「対価の一部」である」

消費者は消費税相当額を対価の一部として支払っているだけであって、消費税の負担者ではない、ということです。実際、消費税法の条文をみても、事業者が納税義務者と定められているだけで、消費者に課しているという記述はどこにもありません(冒頭に紹介した「消費者が負担し」という記述はタックスアンサーという国税庁のHPの内容です)。

「やられた」「騙された」と自分の不勉強を忘れて、思わず思ってしまいました。

3.事業者の負担は株主、従業員、消費者の負担となる

消費税は、最初から、事業者に課税される直接税だったわけですが、それ以外にも、国が事業者に課している負担というのは様々なものがあります。そして、そのことを一般社会人の多くが認識していないという問題があります。一般社会人は「社長ばっかり得をして」と思っていますが、オーナー社長が負担することのナント多いことか。その負担は、結局は従業員、消費者の負担になっていることを忘れてはいけません。

具体的には、

・所得税(国税)源泉徴収事務、特に年末調整
・住民税(地方税)の徴収事務(いわゆる特別徴収)
・社会保険の徴収事務、更にいえば、社会保険料の事業者負担分という経済的負担もあります。

これらの事務作業や金銭負担を、「国税に一本化」したら、莫大な社会コストが下がると思いますが、事業者に一元化したうえで、受け取る側は、国と地方自治体と社会保険事務所とバラバラになっているという現実を、当たり前と思わないようにする必要があると思います。

アメリカみたいに「歳入庁」を作れば、これらの徴収事務コストは大幅に削減されることでしょう。

話を消費税に戻せば、間接税ではなく直接税であるのであれば、わざわざチマチマ領収書をみて色々判断するのも面倒なので、別の計算式を作ってもらって、簡単に事務作業が済むようにしてもらいたいところです。

4.選挙に行くしかないが税務の分かる候補者がいない

この10月からやるべきだったことは、インボイス制度の導入ではなく、免税事業者を無くすか、あるいは、免税点を引き下げることです。理想は最終的には免税点を限りなくゼロに近い数値に設定して、そこに向かって数年かけて免税点を下げていくという対応です。

これは素人の想像ですが、そもそも免税制度が、政治家の選挙対策だったという話がある中で、財務省もそこは触れられなかったところ、インボイスという仕組みを使って、免税制度を残しつつ、しっかり税金は「事業者から徴収する」という仕組みを導入したということのような気がしています。

インボイス制度は、電子レシート・領収書のインフラを国が手動して用意したうえで導入しないと、事務作業が煩雑になり過ぎますし、それを検証する国税側も、現状ではアナログで検証することになるので、「グダグダ(=真面目にインボイスを確認した人がバカをみる)」になる可能性も、かなり高いと思います。

先ほど紹介した判例では、被告人はこうした益税を発生されるような消費税を立法した国会議員に責任があるとして訴訟を起こしています。法治国家において、より良い税制にしていくには、選挙にちゃんと行って、しかるべき人に投票するしかありません。ただ、この論点で働いてくれそうな政治家も政党も見当たりません。残念です。

 

以上、長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。わたしのメルマガ読者の中小零細企業のオーナー社長の皆さんなら、この気持ち分かって頂けるんじゃないか?と思って、書いてみました。

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